2020年東京五輪・パラリンピックに向けたドーピング対策が進んでいる。近年は不正に手を染めた選手の出場を未然に防ぐことを重視し、国際オリンピック委員会(IOC)などの関係機関は、情報を駆使して事前の摘発に努める。違反を見つけても、それが表彰式が終わった後では「クリーンな選手」の晴れ舞台は後味の悪いものになりかねないからだ。日本国内では検査能力の向上や態勢の拡充を急ぐ。

16年リオデジャネイロ五輪では、IOCなどが違反者を締め出すため、大会5カ月前に「特別チーム」を結成した。ドーピングの可能性が高い10競技で、五輪で8位以内が見込める1333選手を特定。国際競技連盟や各国反ドーピング機関に指示を出し、戦略的に抜き打ち検査を実施することで、多くの違反者の出場を阻んだ。東京大会へは、開幕2年前となる今夏には、こうしたチームの活動を始めるべきだと世界反ドーピング機関(WADA)の独立監視チームは提言している。

IOCは過去の五輪で採取した検体を10年間保存し、最新の検査技術で再分析することにも力を入れている。WADAの報告書によれば、リオ大会前には08年北京、12年ロンドン両大会で採取された検体のうち、1243検体を再分析。検査方法の進歩により、陽性反応が出た41選手のリオ出場を食い止めた。

再分析は、選手に「ドーピングをすれば、いずれは見つかる」と思わせる「抑止効果」も期待されており、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)の浅川伸(あさかわ・しん)専務理事は「実効性が高いアプローチ」と指摘する。東京大会前には、リオ大会などの再分析が集中的に行われる見通しだ。

国際機関が主導するこれらの取り組みに対し、日本側は大会前や会期中の大量の検査に対応するだけの態勢整備が急務。現場で検体を採取する検査員は500人程度を見込んでいるが、現在、国内有資格者は約260人で、海外からの応援を含めても人員が不足する見通しだ。そのため、新たに「100人強」(浅川氏)の検査員確保が必要で、JADAや大会組織委員会は国の支援の下、昨秋から検査員の募集、養成に着手した。

五輪・パラリンピックの期間中には、通常、日本国内での1年間の検査量とほぼ同規模の約6千~6500もの検体を迅速に調べることが求められる。組織委は東京都内に大会専用の検体分析施設を19年3月ごろまでに完成させ、大会中は24時間態勢で作業に当たる予定だ。組織委の赤間高雄(あかま・たかお)メディカルディレクターは「アンチドーピングの分野では何一つ欠けても駄目。全てにおいて高いレベルが最低レベル」と隙のない準備が必要と強調した。

(了)2018/05/12 07:00【共同通信社】